肺炎は高齢者がかかる病気で、自分とは無関係、と思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし、肺炎には多くの種類があり、一般の肺炎とは全く原因と治療が異なるタイプがあります。
その中の一つが、加湿器が引き起こす肺炎といわれています。
その原因や症状、治し方を、呼吸器科が専門の吉田良昌医師にお話しいただきました。
(1万年堂ライフ編集部より)
こんにちは。呼吸器科を専門にしている内科医師です。
「肺炎」という言葉を聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。
「若くて健康な私には肺炎は関係ない」と思っている人が多いと思います。そのとおりで、働き盛りの元気な皆さんが肺炎にかかることはめったにありません。
実際にこの記事を読んでいる人の中で、肺炎になった人はほとんどないでしょう。
ところが例外がいくつかあるのです。
今回は、私たちの日常に潜む肺炎、私たちにも関係ある肺炎についてお話しします。
肺炎とはどんな病気?
肺炎は、細菌やウイルスが肺の中まで侵入し、そこで増殖して、ひどい咳や高熱を引き起こす病気です。時には命を落とす人もあります。
一般には、老人の罹患率(病気にかかる割合)が圧倒的に多いのです。
肺炎を引き起こす細菌の多くが知られていますし、効果のある抗生物質が開発されています。
ですから、高齢者や重い合併症を持っている方にとっては肺炎は命取りになりますが、一般的には、薬で治ることが多いです。
身近に存在する「抗生物質が効かない肺炎」
ところが肺炎には、自分自身のアレルギー反応が原因となって発症し、抗生物質が全く効かない種類があるのです。
その中の一つが“加湿器肺”とよばれる病気です。
原因は身近に存在します。湿度に敏感で、加湿器をよく利用するあなたは特に注意が必要です。
加湿器肺は、1970 年に、空調施設が原因と思われる過敏性肺臓炎として初めて報告されました。日本国内でも1978 年に最初の報告がなされ、その後も引き続いて報告されています。
加湿器肺は、アレルギー反応が原因とされる過敏性肺臓炎の中の1種です。一般の肺炎とは全く原因が異なります。
加湿器肺の原因は、加湿器の吹出口や、カバーを取り除いた後のフィルターやファンに繁殖する黒色斑状の汚染物です。これらはカビであり、吸い込んだカビがアレルギーを起こすのです。
加湿器肺の症状は?
加湿器肺の多くは、急な呼吸困難と38度以上の発熱で発症します。
そして翌朝、病院を受診して胸部レントゲンで陰影を指摘され、肺炎と診断されます。
これは最も幸運な経過であり、普通は、風邪と診断されることが多いのです。
また、たとえ肺炎と診断されても、細菌性肺炎と診断され、抗生物質を投与されます。
加湿器肺は抗生物質では治りませんから、改善せず、大きな病院を紹介されて初めて正しい診断がつくことがしばしばあります。
加湿器肺の治し方は?
加湿器肺は、入院してカビを吸い込まないようにするだけで治る例もありますが、症状がひどい場合はさらにステロイドという薬を投与する場合があります。
同時に、加湿器の掃除が必要です。適切な治療を行えば、治る病気です。
発症には体質が関係しており、全ての人が加湿器肺になるのではありません。アレルギー反応を起こす人だけが発症します。多くの人は発症しないのです。
同じ環境で抗原に暴露され続けても、発症する人としない人がいて、発症には何らかの個体の遺伝的要因や、外的修飾因子が関与しているといわれています。
自分はなりやすい体質かどうか、あらかじめ知る方法は、残念ながらありません。
しかし、こういう肺炎があることを知っていることは、あなた自身の健康管理にとても役に立つ知識です。
加湿器肺の診断方法は?予防するには?
「自宅環境誘発試験」といって、疑わしいカビのある自宅に戻り、肺炎が発症するかどうか試験する方法があります。
また、環境から培養同定された菌で抗原を作成し、自分の血液との反応の有無を調べることで診断できます。
予防としては、こまめに加湿器を掃除することはもちろんですが、それでも発症した場合は、残念ながら別の加湿方法を考えなければなりません。
加湿器を使っている人で、急な発熱、呼吸困難が出てきた人は、すぐに病院を受診してください。
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